この記事は「自律型組織への道」全7回連載の第1回です
指示待ち組織から、社員が自ら考え動く「自律型組織」へ変わるための経営の原理原則を、全7回にわたってお伝えします。第1回のテーマは、すべての土台となる経営の「根っこ」を見直すことの重要性です。
中小企業の経営において、「社員が定着しない」「売上が伸び悩んでいる」「自分が現場を離れると仕事が回らない」といった悩みは、決して尽きることがありません。経営者であるあなたは、毎日朝早くから夜遅くまで誰よりも働き、会社の未来のために奔走しているはずです。
それにもかかわらず、なぜ組織は思い通りに動かず、停滞感という「見えない壁」にぶつかってしまうのでしょうか。
▶ この記事のポイント
評価制度やITツールなどの「枝葉(戦術)」をいくら整えても、それを支える「根っこ(存在意義・ビジョン・理念)」が曖昧なままでは組織は変わりません。社員が辞めていく本当の理由は、給料や休日ではなく「この会社がどこに向かっているのか」が見えないこと。パソコンのOS(基本ソフト)が古いまま最新アプリを入れても動かないのと同じ構造です。28年・200社超の支援実績を持つ専門家が、組織の「根っこ」を育て直す第一歩を解説します。
一生懸命に水をやっているのに、なぜ組織は枯れてしまうのか?
「社員のモチベーションを上げるために、新しい人事評価制度を導入した」
「コミュニケーションを活性化させるために、流行りの1on1ミーティングを取り入れた」
「業務効率化のために、最新のITツールやシステムを導入した」
経営が行き詰まりを感じたとき、多くの経営者はこうした「新しい施策」に解決策を求めます。外部のコンサルタントを入れたり、話題のビジネス書を読んだりして、他社で成功しているノウハウを自社にも取り入れようと努力します。
しかし、多くの場合、こうした施策は長続きしません。最初は社員も物珍しさから付き合ってくれますが、数ヶ月もすれば形骸化し、「また社長が新しいことを始めたけれど、どうせすぐ終わるだろう」と冷めた目で見られるようになってしまいます。
私が28年間、200社以上の中小企業を支援してきた中で、この「施策の形骸化」を幾度となく見てきました。ある製造業の会社では、3年間で4つの人事制度を導入しては廃止を繰り返していました。社員の間では「社長の新しいもの好き」と揶揄され、新しい施策が発表されるたびに白けた空気が流れていたのです。
一生懸命に水をやり、肥料を与えているのに、なぜ組織という木は元気に育たないのでしょうか。
その答えは非常にシンプルです。あなたが対処しようとしているのは、木に例えるなら「枝葉」の部分にすぎず、本当に手当てをしなければならない「根っこ」が十分に張っていないからです。
「枝葉」の対策(戦術)と「根っこ」(戦略・在り方)の違い──なぜ離職が止まらないのか
経営における「枝葉」とは、目に見える制度やツール、テクニックのことです。評価制度、給与体系、ITツール、SNSを使った集客手法などは、すべて枝葉(戦術)に該当します。これらは決して無駄なものではありません。木が大きく育つためには、豊かな枝葉が必要です。
しかし、どんなに立派な枝葉を接ぎ木したとしても、それを支える「根っこ」が貧弱であれば、少しの風が吹いただけで木は倒れてしまいます。
組織における「根っこ」とは何か
では、組織における「根っこ」とは何でしょうか。
それは、「この会社は何のために存在しているのか(企業の存在意義・パーパス)」であり、「我々はどこへ向かっているのか(ビジョン)」、そして「どのような価値観で仕事をするのか(理念・在り方)」です。
「うちには立派な経営理念があるから大丈夫だ」と思われたかもしれません。しかし、額縁に入って社長室の壁に飾られているだけの理念や、朝礼でただ暗唱されているだけの理念は、地面に根を張っていません。社員一人ひとりが「だから、今日の自分の仕事は社会にとって意味があるんだ」と腹落ちし、日々の業務の判断基準として機能して初めて、それは生きた「根っこ」となります。
社員が辞めていく本当の理由──離職の根本原因
社員が辞めていく本当の理由は、給料が安いからでも、休みが少ないからでもありません(もちろん最低限の労働条件は必要ですが)。
「この会社にいて、自分がどう成長できるのか」「この会社がどこに向かっているのか」という根本的な「Why(なぜ)」が見えない不安と不信感が、離職の最大の原因なのです。
OS(在り方)が古ければ、最新のアプリ(制度)は動かない
私はこの「根っこと枝葉」の問題を、よくパソコンやスマートフォンの「OS(基本ソフト)」と「アプリケーション」の関係に例えてお話ししています。
最新の機能を持った素晴らしい人事評価制度(アプリケーション)を買ってきたとします。しかし、それを受け入れる組織の風土や、経営者・幹部のマインドセット(OS)が、「社員は管理し、アメとムチで動かすものだ」という古いバージョンのままであれば、最新のアプリは正常に作動しません。エラーを起こし、かえって現場を混乱させるだけです。
経営の壁を突破するために今必要なのは、新しいアプリを探し求めることではありません。一度立ち止まり、自社のOSそのものを見つめ直す勇気を持つことです。
それは、社長自身が「自分はなぜこの会社をやっているのか」「本当はどういう組織をつくりたいのか」という、痛みを伴う深い自己対話から始まります。
「根っこ」を育てるために社長が最初に向き合うべき問い──存在意義の言語化
では、具体的に「根っこ」を育て、OSをアップデートするためには、何から始めればよいのでしょうか。
最初のステップは、「競争をやめ、自社の『存在意義』を言語化すること」です。
他社を見るのをやめ、自分たちの内側を見る
業績が苦しいときほど、私たちは同業他社を見てしまいます。「あそこの会社は新しいサービスを始めた」「あそこの方が値段が安い」。そうして他社との比較(競争)に陥ると、必然的に「より安く、より速く」という消耗戦に入り、現場の疲弊を招きます。
他社を見るのをやめ、自分たちの内側、そしてお客様の顔をじっくりと見てください。
「数ある会社の中から、なぜお客様はウチを選んでくださったのか?」
「私たちが提供している本当の価値(喜び、安心、問題解決)は何なのか?」
幹部と「共通言語」をつくる──社長の独り言を組織の判断軸へ
この問いに対して、経営者自身が心の底から納得できる答えを見つけること。そして、その答えを社長一人の「独り言」で終わらせるのではなく、右腕となる幹部と徹底的に語り合い、解釈をすり合わせることです。
社長と幹部が同じ景色を見つめ、「ウチの会社の存在意義はこれだ」という確信を持てたとき、それは強靭な「根っこ」となって地中深くへと伸び始めます。根っこがしっかりしていれば、その後に導入する評価制度や研修といった「枝葉」の施策は、驚くほどスムーズに機能し始めます。
経営者の方へ:今週30分、この問いに向き合ってみてください
静かな場所で一人になり、「なぜお客様はウチを選んでくださるのか」「自社が提供している本当の価値は何か」を紙に書き出してみてください。そして、その答えを最も信頼する幹部に見せ、「これについてどう思う?」と対話を始めてください。この30分が、組織の「根っこ」を育て直す最初の一歩になります。
よくある質問(FAQ)
Q:新しい制度やツールを導入しても組織が変わらないのはなぜ?
A:制度やツールは組織の「枝葉(戦術)」にあたります。それを支える「根っこ(存在意義・ビジョン・理念)」が曖昧なまま枝葉だけを整えても定着しません。OS(組織の在り方)が古いまま最新アプリ(制度)をインストールしてもエラーを起こすのと同じ構造です。
Q:社員が辞めていく本当の理由は何ですか?
A:給料や休日だけが原因ではありません。「この会社にいて自分がどう成長できるのか」「会社がどこに向かっているのか」という根本的な「Why」が見えない不安と不信感が、離職の最大の原因です。存在意義が明確で社員に浸透している会社は、定着率が高い傾向があります。
Q:組織の「根っこ」を育てるために最初にやるべきことは?
A:競争をやめ、自社の存在意義を言語化することです。「なぜお客様はウチを選んでくださったのか」「自社が提供している本当の価値は何か」を問い直し、その答えを幹部と徹底的に語り合い、共通言語として育てることが最初のステップです。
まとめ:根っこが育てば、枝葉は自然と茂る──自律型組織への第一歩
問題の根本原因は、社員の能力不足でも、社長の努力不足でもありません。
組織の「根っこ(在り方)」が曖昧なまま、枝葉(戦術)ばかりを追い求めてしまう「構造」にあります。
この構造を壊し、社長の想いが末端の社員にまで血肉となって通い合う組織をつくるためには、社長と幹部の間に強い「共通言語」を生み出すプロセスが不可欠です。
次回予告──【第2回】「優秀な社長」であるほど陥る罠と、それを乗り越える3つの覚悟
次回は、根っこを張るプロセスにおいて最大の障壁となる「リーダー自身の姿勢」についてお伝えします。社長が優秀であるほど社員が指示待ちになる構造と、それを乗り越えるための3つの覚悟について紐解いていきます。
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プロフィール
一般社団法人未来に輝く企業づくり研究会
中村秀和
社員がイキイキと働き、会社が成長する仕組みづくりを支援することで、未来の子ども達が希望を持てる社会をつくるこを目指して活動しています。
事業の成長と発展でお悩みの企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。
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