この記事は「職場のルールブック」シリーズの第2回です
第1回:就業規則を「禁止事項の羅列」から「仲間への約束」に変えた理由
前回の記事では、社労士である私が自社の就業規則を作る際に感じた葛藤と、ルールを「仲間への約束」へと書き換えた背景についてお話ししました。
今回は、その新しいルールブック(就業規則)の核となっている、「人の成長」に対する考え方を具体的にご紹介します。
▶ この記事のポイント
「社員を育てる」という言葉の裏にある一方的な管理のニュアンスを手放し、教える側も教わる側も共に成長する『共育(きょういく)』へ。社労士法人ココフルが自社のルールブックに組み込んだ3つの仕組み──①キャリアコンサルティング(年1回の目標設定)、②毎月の1on1面談(啐啄同時のフォローアップ)、③自由参加の社内勉強会──を具体的に公開します。自律型組織をつくりたい経営者の方に、そのまま自社に取り入れられるヒントをお届けします。
「育てる」という言葉の裏にある「支配」を捨てる──自律型組織への出発点
多くの企業で「社員を育てる」という言葉が使われます。しかし、そこには知らず知らずのうちに「上の人間が下の人間を型にはめる」という、一方的な管理のニュアンスが含まれてはいないでしょうか。
ココフルが目指すのは、指示を待つのではなく、自ら考え、自ら動く「自律型組織」です。そのためには、ルールの根底にある「教育」の定義自体をアップデートする必要がありました。
そこで私たちがルールブックの第1章に掲げたのが、「共育(きょういく)」という言葉です。
28年間、200社以上の中小企業を支援してきた中で、「社員が育たない」と嘆く経営者に共通していたのは、「教育=上から下へ教え込むこと」という無意識の前提でした。しかし、本当に社員が育った企業に共通していたのは、経営者自身が「自分も社員から学んでいる」という姿勢を持っていたことです。この経験が、ココフルのルールブックに『共育』を据える決断の背景にあります。
「教え上手」は「教わり上手」から──『共育』が心理的安全性を高める理由
「共育」とは、教える側が一方的に知識を授けるのではなく、教える側も、教わる側も、共に学び、共に育つという考え方です。
ココフルのルールブックには、こう記しています。
「先輩も後輩も、年次に関係なく、互いから学べることがあります。『教え上手・教わり上手』の文化を大切にします」
ベテランが若手に実務を教える一方で、若手から新しい感性やデジタルツールの使い方を学ぶ。こうした双方向のリスペクトがある環境こそが、心理的安全性を高め、組織全体の成長スピードを最大化させます。
経営者の方へ:「教わる姿勢」を見せていますか?
自社に「共育」の文化を根づかせる最も効果的な方法は、経営者自身が「教わる姿勢」を率先して見せることです。会議で若手に「その分野は君の方が詳しいから教えてくれ」と言う。それだけで、組織の空気は変わり始めます。上下関係に関係なく学び合える空気は、経営者の一言から生まれます。
毎月の1on1で「啐啄同時」のタイミングを逃さない──キャリア面談と継続的フォローアップ
年に一度のキャリアコンサルティングで「自分事」のスタートを切る
ココフルでは、毎年9月の期初に、内部での「キャリアコンサルティング(キャリア面談)」を実施しています。
「これから1年、あなたはどうなりたいか?」「そのために、法人のリソースをどう活用するか?」
法人のニーズと個人のビジョンを丁寧に重ね合わせ、一人ひとりが「自分事」として新しい年度をスタートさせます。
毎月の1on1で「啐啄同時」を実現する
しかし、目標は「立てて終わり」ではありません。
期初に描いたビジョンを現実のものにするため、ココフルでは毎月の1on1面談でフォローアップを行っています。日々の業務に追われる中でも、月に一度立ち止まり「今月はどうだった?」「壁にぶつかっていない?」と対話を重ねる。
本人が自ら殻を破ろうとする(啐)瞬間に、リーダーがそっと外からサポートする(啄)。この「啐啄同時」のタイミングを逃さないための仕組みが、毎月の継続的な1on1なのです。
自社で取り入れる場合のヒント
年1回の目標設定面談はすでに行っている企業も多いですが、「立てた目標を毎月フォローする1on1」を導入している中小企業はまだ少数です。最初は月1回30分で十分。ポイントは「業務の進捗確認」ではなく「本人の状態・成長・悩み」を聴くことに徹すること。この小さな仕組みが、社員の「やらされ感」を「自分で決めた感」に変えます。
「強制しない」からこそ人は学ぶ──自由参加の社内勉強会が全員参加になった理由
もうひとつの大きな特徴が、週1ペースで開催する社内勉強会です。
これは無理をして時間外に集まるのではなく、業務時間内の「アイドルタイム」を有効活用しています。そして何よりこだわっているのが、「参加はあくまで本人の主体性を尊重し、自由参加とする」ことです。
「会社が強制する学び」からは、本当の自律は生まれません。あくまで自ら学びたいと思う気持ちを尊重しました。
しかし、面白いことが起きています。いざ始めてみると、なんと毎週全員が自主的に参加してくれているのです。
「強制されないからこそ、自ら学びたくなる。仲間と共に成長したくなる」
これこそが、私たちが目指す『共育』のリアルな姿なのだと、私自身がメンバーの姿勢から教わりました。
なぜ「自由参加」が「全員参加」になったのか?
「強制しなくても全員が参加する」という結果は、一朝一夕で生まれたものではありません。土台にあるのは、①前回の記事で紹介した「前文(こころざし)」による理念の共有、②キャリア面談での個人ビジョンの明確化、③1on1での継続的な対話──この3つの仕組みが有機的に連動していることです。「学ぶ意味」が腹落ちしている環境では、強制がなくても人は自ら動くのです。
制度は「仕組み」である前に「メッセージ」──人的資本経営の本質
これらのルールは、単なる管理手法ではありません。
「あなたの人生のビジョンと、法人のビジョンを重ね合わせていこう。そのための学びの場と対話の時間は、私たちがしっかり保証する」
という、法人からメンバーへの約束なのです。
人的資本経営の本質は、一人ひとりの可能性を信じ、共に育つ仕組みをルールに宿らせることにあります。もし、皆さんの会社のルールが「管理」に偏っているとしたら、そこに少しだけ「共に育つ」というエッセンスを加えてみてはいかがでしょうか。
よくある質問(FAQ)
Q:「共育」の文化をつくるために最初にやるべきことは何ですか?
A:経営者自身が「教わる姿勢」を見せることが最も効果的です。会議で部下に「その件は君の方が詳しいから教えてくれ」と言う、1on1で「最近、君から学んだこと」を伝える──こうした小さな行動が、上下関係に関係なく学び合える空気をつくります。
Q:自律型組織をつくるために最初にやるべきことは?
A:まず毎月の1on1面談を導入することをお勧めします。月に一度、「今月はどうだったか」「壁にぶつかっていないか」を対話する。本人が自ら成長しようとするタイミングにリーダーがサポートする「啐啄同時」の仕組みが、自律型組織の基盤になります。
Q:社内勉強会を始めたいが、社員が参加してくれるか不安です。
A:最も重要なのは「強制しない」ことです。業務時間内のアイドルタイムを活用し、参加は本人の主体性に委ねる。ただし、「学ぶ意味」が社員に伝わっていなければ参加は増えません。先にキャリア面談や1on1で個人の成長ビジョンを明確にし、「この勉強会が自分の成長にどうつながるか」が腹落ちしている状態をつくることが前提です。
まとめ:『共育』の仕組みが、自走する組織をつくる
今回ご紹介したココフルの3つの仕組みを整理します。
①キャリアコンサルティング(年1回)── 個人のビジョンと法人のビジョンを重ね合わせ、「自分事」の出発点をつくる
②毎月の1on1面談── 啐啄同時のタイミングを逃さず、継続的に成長をフォローアップする
③自由参加の社内勉強会(週1回)── 強制しないからこそ、自ら学ぶ文化が育つ
共通しているのは、「管理」ではなく「信頼」を土台にしているということです。制度は社員を縛るためのものではなく、「あなたの成長を会社は本気で応援している」というメッセージ。そのメッセージがルールに宿った時、社員は指示を待つのではなく、自ら考え動く「自走する組織」の一員として育ち始めます。
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プロフィール
一般社団法人未来に輝く企業づくり研究会
中村秀和
社員がイキイキと働き、会社が成長する仕組みづくりを支援することで、未来の子ども達が希望を持てる社会をつくるこを目指して活動しています。
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