就業規則を「禁止事項の羅列」から「仲間への約束」に変えた理由|社労士法人が自社で実践した職場のルールブックづくり

「就業規則」と聞いて、ワクワクする経営者の方はどのくらいいるでしょうか。

おそらく多くの経営者にとって、それは「トラブルを防ぐための守りの文書」であり、難しい法律用語が並んだ「できれば読みたくないもの」かもしれません。しかし、会社を成長させ、社員がいきいきと輝く組織を作りたいと願うとき、今のままの就業規則で本当に十分でしょうか。

MiraQの主催者の立場でもある私たち社会保険労務士法人ココフルは、この度、自社の就業規則を抜本的に見直し、一冊の「職場のルールブック」としてまとめ直しました。 今回は、なぜ専門家である私たちが、あえて「型通り」ではないルール作りを選んだのか、その背景にある想いをお伝えします。

▶ この記事のポイント

就業規則は「社員を縛るもの」ではなく「会社と社員が共に幸せになるための地図」。社労士法人であるココフルが自社の就業規則を「職場のルールブック」に書き換えた理由と実践プロセスを公開します。「啐啄同時」「共育」という2つのキーワードを軸に、人的資本経営を日常のルールに落とし込む方法がわかります。経営者の方が自社の就業規則を見直すヒントとしてもお役立てください。

社労士としての葛藤──「正しい」けれど「ワクワクしない」就業規則

私自身、社会保険労務士という立場上、これまで28年間で200社を超える就業規則に目を通し、作成にも携わってきました。

労働基準監督署が推奨するモデル就業規則や、世の中に溢れる一般的なひな型は、法律的に間違いなく「正しい」ものです。労使トラブルを未然に防ぎ、リスクから会社を守るための防波堤としては完璧に機能します。

しかし、いざ自社(ココフル)のルールを作ろうとひな型を前にしたとき、どうしても心が躍らなかったのです。

「これを読んで、うちのメンバーは明日もこの職場で頑張ろうと思えるだろうか?」

「私が日頃からMiraQで皆さんに熱く語っている『人的資本経営』や『人が輝く組織づくり』を、この無味乾燥なテキストで本当に体現できているのだろうか?」

法律を扱う専門家だからこそ、安全で効率的な「型通りの正解」に甘んじてしまいそうになる。そこに、強い違和感と葛藤がありました。

人を管理し、縛るためのルールではなく、人が自ら育ち、輝くための仕組みをつくりたい。その想いから、私たちの就業規則の大幅なリニューアルが始まりました。

就業規則は「ラブレター」であってもいい──禁止事項の羅列から仲間への約束へ

ルールとは「社員を縛るもの」ではなく、「会社と社員が共に幸せになるための地図」であるべきです。

そこで、ココフルの新しい就業規則には、冒頭に大きな「前文」を設けました。そこには、法律の条文ではなく、私たちがなぜこの会社を創り、どこへ向かおうとしているのかという「こころざし」を綴っています。

「会社が社員を守り、社員が会社を創る」

この双方向の約束を言語化することで、就業規則は単なる義務の記録から、仲間への「ラブレター」のような存在へと変わりました。

経営者の方へ:自社の就業規則に「前文」はありますか?

就業規則の見直しを検討されている方は、まず冒頭に「なぜこの会社が存在し、社員とどんな関係を築きたいのか」を書き加えてみてください。法律条文の前にこの一節があるだけで、就業規則は「読まなければならないもの」から「読みたくなるもの」に変わり始めます。経営理念と就業規則をつなげることが、理念浸透の最初の一歩にもなります。

「啐啄同時」と「共育」──職場のルールブックの土台にある2つの思想

今回のルール作りにおいて、私たちの拠り所となった2つの言葉をご紹介します。

啐啄同時(そったくどうじ)──成長は、本人と組織の呼応から生まれる

ひな鳥が内側から殻を突く力と、親鳥が外側から助けるタイミングが一致して初めて、新しい命が生まれるという教えです。

組織においても、本人の「成長したい」という意志と、それを受け止めるチームの関わりが重なり合ってこそ、本物の成長が生まれます。ルールブックの中にも、社員の自発的な成長意欲を引き出す仕組み(自己申告制度・チャレンジ目標の設定など)と、組織としてそれを支える仕組み(メンター制度・研修支援など)を対にして設計しました。

共育(きょういく)──教える側も教わる側も、共に育つ

教える側が偉いわけではありません。教える側も、教わる側も、共に学び、共に育つ。そんな対等でリスペクトのある関係性を、ルールの根本に据えました。

この「共育」の思想は、MiraQの定例研究会でも大切にしている考え方です。経営者と幹部が「先生と生徒」ではなく「共に学ぶ仲間」として対話する場をつくることで、組織の中に自然と「教え合い・学び合い」の文化が生まれます。

人的資本経営を「カタチ」にする──就業規則で変えた3つのこと

今、注目されている「人的資本経営」。それを単なるスローガンで終わらせないためには、日々の運用の基準となるルールにその魂を宿らせる必要があります。

ココフルが今回の就業規則リニューアルで実際に変えた3つのポイントを共有します。

①評価を「下すもの」から「対話のプロセス」に変えた

ココフルでは、評価を一方的に「下すもの」ではなく、1on1などを通じた「対話のプロセス」と定義しました。「何をしたか」だけでなく「どう成長し、チームにどう貢献したか」を共に確認し合う時間。ルールひとつを変えるだけで、社員とのコミュニケーションの質が劇的に変わります。

②キャリアパスを「見えるもの」にした

「この会社で3年後にどうなれるか」を就業規則の中で明示しました。「頑張っても将来が見えない」という不安は、離職の大きな原因です。キャリアパスをルールとして明文化することで、社員は自分の成長の方向性を自分で描けるようになります。

③「禁止事項」を「行動指針」に書き換えた

従来の就業規則は「してはいけないこと」の羅列になりがちです。ココフルでは、禁止事項を必要最低限に絞り、代わりに「私たちが大切にする行動」をポジティブな言葉で記載しました。「遅刻をしてはならない」ではなく「仲間との約束の時間を大切にしよう」。同じ内容でも、受け取る側の気持ちはまったく違います。

自社で取り入れる場合のヒント

いきなり就業規則全体を書き換える必要はありません。まずは①冒頭に前文(会社の想い)を追加する、②禁止事項の中から3つだけポジティブな表現に言い換える──この2つから始めてみてください。「ルールが変わった」と社員が感じるだけでも、組織の空気に変化が生まれます。

よくある質問(FAQ)

Q:就業規則の見直しで最初にやるべきことは何ですか?

A:まず就業規則の冒頭に、会社の理念やこころざしを綴った「前文」を設けることをお勧めします。法律の条文の前に、なぜこの会社が存在し、社員とどんな関係を築きたいのかを言葉にすることで、就業規則は禁止事項の羅列から仲間への約束に変わります。

Q:就業規則を社員に読んでもらうにはどうすればいいですか?

A:就業規則を「職場のルールブック」として再編成し、法律用語を日常の言葉に言い換えることが効果的です。会社の価値観や行動指針をセットにして一冊にまとめることで、社員が自分ごととして読める文書になります。

Q:人的資本経営を就業規則に反映するにはどうすればいいですか?

A:評価を「1on1を通じた対話のプロセス」と定義する、成長やチームへの貢献を評価基準に組み込む、キャリアパスを明示するなど、社員の成長を支援する仕組みをルールに織り込むことで、人的資本経営の理念が日常の運用に根づきます。

まとめ:「ワクワクする会社」を、足元から創る

「社員がいきいき働く姿が、子供たちの未来への希望になる」

これは、私たちの揺るぎないミッションです。

経営者がルールに込める「想い」が変われば、必ず組織の空気は変わります。「守らせるためのルール」を卒業し、「みんなで守りたくなる、みんなが輝くためのルール」を創ってみませんか?

これからもココフルは、自らが先陣を切って「未来輝く企業づくり」の実践を積み重ね、そのプロセスを皆さんに分かち合っていきたいと考えています。

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プロフィール

一般社団法人未来に輝く企業づくり研究会
中村秀和

社員がイキイキと働き、会社が成長する仕組みづくりを支援することで、未来の子ども達が希望を持てる社会をつくるこを目指して活動しています。

事業の成長と発展でお悩みの企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。

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